
遺品整理を進める中で、故人が所有していた車をどうするかという問題に直面する方は少なくありません。家具や日用品であれば処分や譲渡が比較的容易ですが、自動車は法律で「所有者」が明確に登録されている財産であるため、相続に伴う手続きが必要になります。特に「名義変更」をしないまま放置すると、思わぬトラブルの原因になりかねません。
例えば、車検証の名義が故人のままでは、その車を相続人が自由に運転することはできず、売却や廃車といった処分も不可能です。さらに、自動車税や自賠責保険も故人の名義で継続されるため、支払い通知が届いても手続きが滞り、未納や延滞金が発生するリスクもあります。万が一、事故を起こした場合には、名義が故人であることで保険が適用されない可能性もあり、家族に大きな負担を与えることになってしまいます。
このように、遺品として残された車をそのままにしておくのは非常に危険です。まずは相続人の間で「車を誰が引き継ぐのか」を明確にし、その後、運輸支局や軽自動車検査協会で名義変更の手続きを行う必要があります。名義変更は決して難解なものではありませんが、戸籍謄本や遺産分割協議書といった書類を揃える手間がかかるため、早めに準備を始めることが大切です。
今回は、遺品車の名義変更に必要な流れ、準備すべき書類、手続き上の注意点を整理し、相続人がスムーズに進められるように解説していきます。
遺品の車をどうするか決めるステップ
相続放棄を選択すると、故人の車を含むすべての財産に対する権利と義務を放棄することになります。車に関しても当然所有権を主張できなくなるため、他の相続人が名義変更や売却・廃車の手続きを行います。注意すべきは、相続放棄は家庭裁判所への申述が必要であり、相続開始から原則3か月以内に行わなければならない点です。この期限を過ぎると放棄が認められないため、遺品車の扱いに悩む前に早めに判断することが重要です。
遺品車を相続する場合、相続人は必ず名義変更を行わなければなりません。車検証の名義が故人のままでは運転・車検・保険更新ができず、実質的に使用不可能です。必要書類としては、戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などがあり、運輸支局(普通車)や軽自動車検査協会(軽自動車)で手続きします。名義変更を済ませることで自動車税や保険も相続人に切り替わり、安心して利用できるようになります。
遺品車を売却する場合も、相続人が名義変更を行うか、相続に関する必要書類を揃えたうえで買取業者に依頼する方法があります。多くの業者は遺産相続の特殊事情に対応しており、必要な戸籍謄本や遺産分割協議書を提出すれば買い取り可能です。売却すれば現金化でき、相続人で分配することも容易になります。ただし、名義変更や相続書類が整わないと手続きが進まないため、早めの準備が不可欠です。
遺品車を廃車にするには、まず相続人名義に変更してから廃車手続きに進むのが原則です。解体業者や引取業者に依頼すれば、抹消登録を行い、自動車税や重量税の還付を受けられる場合もあります。放置車両は固定資産的に税金が発生し続けるため、利用しない車は速やかに廃車処理するのが安心です。必要書類の準備と同時に、業者の信頼性を確認することも忘れずに行いましょう。