
デジタル遺品整理で起こりうる問題・トラブル事例
アクセスできない(パスワード不明・2段階認証など)
デジタル遺品で最も多いトラブルのひとつが、故人の端末やアカウントにアクセスできないことです。パスワードが分からなかったり、2段階認証が設定されていたりすると、家族であってもログインが困難になります。特に金融系やクラウドサービスはセキュリティが強固で、認証用のメールやSMSが受信できなければ手続きが進みません。重要な資産や思い出の写真にたどり着けないまま、データが失われてしまう危険性があります。
認証情報が不明だと資産や思い出にアクセスできない。
サブスクリプションや契約サービスの解約忘れによる継続請求
動画配信や音楽サービス、クラウドストレージなどのサブスクリプション契約は、自動的に更新される仕組みが多く、故人が亡くなった後も請求が続くことがあります。遺族が契約状況を把握していなければ、気付かないうちに長期間の料金が発生し、家計を圧迫する恐れがあります。生前に契約一覧を整理しておかないと、無駄な支出につながるだけでなく、解約のために多くの時間や手間がかかってしまいます。
契約不明のままでは料金請求が続き無駄な支出に。
SNSアカウントの乗っ取り・悪用リスク/プライバシーの問題
SNSやメールアカウントが放置されると、不正アクセスや乗っ取りによる悪用リスクが高まります。故人の名義でスパムが送られたり、不適切な投稿がされることもあり、遺族の名誉やプライバシーを傷つけかねません。また、SNS上の写真やメッセージが公開されたまま残ることで、家族が精神的な負担を抱えることもあります。アカウントを削除するか、追悼用に残すかを早めに判断することが求められます。
放置SNSは不正利用や名誉侵害のリスクを伴う。
金融資産・ネット銀行・仮想通貨の相続での課題
ネット銀行や証券口座、仮想通貨ウォレットなどは、紙の通帳や証書がない場合が多いため、遺族が存在を把握できないまま埋もれてしまうことがあります。暗証番号や秘密鍵がなければ引き出しや承継は不可能で、莫大な資産が「消失」してしまう恐れもあります。さらに相続手続きには死亡証明や裁判所の書類などが必要となり、従来の遺産以上に手続きが複雑化するのが特徴です。
電子資産は相続が困難で、存在自体が埋もれやすい。
家族間のトラブル(情報の有無・扱い方の齟齬)
デジタル遺品は目に見えにくいため、何を残し、何を削除するかで家族間に意見の相違が生じやすいです。特にプライベートなメッセージや写真の扱いを巡って、「残したい」人と「消したい」人が対立することもあります。さらに、誰も契約状況を把握していなければ、不要な費用を誰が負担するかで揉める可能性もあります。遺族の間で感情的な摩擦が起きやすいのもデジタル遺品特有の課題です。
情報の扱いを巡り家族間の意見対立が起きやすい。
生前の準備(終活としてできること)
資産・アカウント・データのリスト化/記録化
まず重要なのは、故人がどのような資産やアカウントを持っていたかを明確にすることです。銀行口座、証券口座、SNS、クラウドストレージ、サブスクリプション契約などを一覧化し、どこに何があるかを「見える化」しておくと、遺族がスムーズに把握できます。紙やデジタルいずれの形式でも構いませんが、定期的に更新し、信頼できる家族に存在を伝えておくことが大切です。
エンディングノートに希望・アクセス方法を残す
エンディングノートは、デジタル遺品に関する希望やアクセス方法を残すのに適したツールです。どのデータを残してほしいか、削除してほしいか、また必要なパスワードや解約の手順を記録しておけば、遺族の負担を大きく軽減できます。法律的な効力はありませんが、本人の意思を明確に示すことで、家族の間で起こりがちな意見の対立を避ける効果も期待できます。
信頼できる代理人・デジタル遺品管理者を決める
すべてを家族に委ねるのではなく、信頼できる代理人や管理者を決めておくのも有効です。特に複雑な金融資産やオンライン事業を持っている場合、専門知識のある人や弁護士に任せることで、相続や解約の手続きが円滑に進みます。事前に契約や同意を得ておくことで、遺族が混乱することなく、法的な問題を回避しながら整理が可能になります。
パスワード管理・暗証情報整理
デジタル遺品の最大の壁となるのがパスワードや暗証番号です。これらを整理するには、パスワード管理ツールや専用ノートを活用するのが効果的です。セキュリティを確保しつつ、必要な情報を残しておけば、遺族がアクセスに困ることを防げます。特に二段階認証の設定がある場合は、その解除方法や代替手段も記録しておくことが望まれます。
不要なデータやアカウントの見直し・削除
利用しなくなったアカウントや不要なデータは、生前に整理して削除しておくことが理想です。残しておくと遺族にとって判断が難しくなるだけでなく、セキュリティリスクの温床となります。定期的に不要なものを見直すことで、残された人の作業を減らし、自身のデジタル環境を安全でスリムに保つことができます。
定期的な更新・見直し
デジタル環境は常に変化するため、一度整理しても放置すれば状況が変わります。新しい契約サービスや端末の購入、アカウントの追加などがあれば、その都度リストやエンディングノートを更新する必要があります。年に一度の点検を習慣化するだけでも、遺族にとっての負担軽減につながり、最新の情報を確実に伝えることが可能になります。