
トラブルを避けるためにできる準備
SNSやメール、オンラインサービスのアカウントは数が多く、遺族が把握するのは容易ではありません。そこで有効なのが「デジタル遺品リスト」の作成です。利用しているサービス名やログイン方法、契約状況などを整理し、紙やデジタル形式で残しておくことで、遺族が無駄な探索に悩まされずに済みます。定期的に更新しておけば、不要な契約や使っていないアカウントの整理にもつながります。
SNSには追悼アカウント制度を備えたものもありますが、実際に追悼にするか削除するかは遺族の判断に委ねられる場合が多いです。故人の意向が分からないまま話し合うと、遺族間で意見が食い違い、余計な摩擦を生むこともあります。生前に「残してほしい」「削除してほしい」と希望を具体的に伝えておけば、遺族の負担を軽減し、判断に迷う時間も大幅に減らすことができます。
アカウント情報を安全に保管し、必要な時に家族が参照できるようにするためには、パスワード管理アプリや「デジタル終活ノート」の活用が有効です。これらを使えば、複数のSNSやサービスのログイン情報をまとめて管理でき、万が一の際にもスムーズに手続きを進められます。アプリには共有機能が備わっているものもあり、信頼できる家族と限定的に情報を共有することも可能です。
デジタル遺品整理の専門家やサービスの活用
遺品整理業者・弁護士・IT専門サービスなどの活用方法
SNSアカウントを含むデジタル遺品整理は専門知識が必要になるケースがあります。遺品整理業者の中には、パソコンやスマホ内のデータ整理、SNSアカウントの解約サポートを行うところもあります。弁護士に相談すれば、相続や利用規約に関わる複雑な手続きを正しく進められます。また、IT専門サービスではクラウドやSNSのアカウント削除代行、データ復旧などを行っており、遺族だけでは解決しにくい問題を支援してくれます。
費用感・依頼の流れ
デジタル遺品整理にかかる費用は依頼内容によって大きく異なります。業者にスマホやPCのデータ整理を依頼する場合は数万円程度から、弁護士への相談は初回相談無料〜1時間1万円程度が目安です。SNS削除やデータ復旧を専門サービスに依頼すると数千円〜数万円が一般的です。依頼の流れは、問い合わせ→見積もり→正式契約→作業→完了報告という手順が基本で、内容に応じて日数や費用が変わります。
信頼できる業者を選ぶポイント
デジタル遺品整理は個人情報を扱うため、業者選びが極めて重要です。実績や口コミを確認するのはもちろん、公式サイトに業務内容や料金体系を明示しているかもチェックしましょう。また、個人情報保護の体制や守秘義務契約を整えているかも重要な判断基準です。極端に安価で「即日対応」を強調する業者はトラブルのリスクが高いため注意が必要です。安心できる専門家に依頼することで、遺族の負担を大きく減らせます。
まとめ
現代の遺品整理において、SNSアカウントは形のない「デジタル遺品」として重要な位置を占めています。投稿や写真、交友関係は故人の人生を物語る大切な記録であり、残された家族にとっても心の拠り所となり得ます。その一方で、誕生日通知や個人情報の流出といった問題も抱えており、単純に「残す」「消す」と決めるのは容易ではありません。こうした時に役立つのが「追悼アカウント」という仕組みです。各SNSごとの対応を知っておくことで、遺族は迷いを減らし、より納得のいく選択ができるようになります。そして何より大切なのは、生前から準備をしておくことです。デジタル遺品リストを作成したり、削除か保存かの希望を家族に伝えておくだけでも、遺族が抱える心の負担は大きく軽減されます。SNSアカウントもまた「大切な遺品」であるという認識を持ち、備えを進めることがこれからの時代には求められているのです。

デジタル遺品の整理は、「まだ先のこと」と思いがちですが、誰にでも突然必要になる可能性があります。いざという時に家族が迷わず行動できるように、まずは小さな一歩から始めてみてください。SNSアカウントを書き出す、希望を家族に伝えるだけでも安心につながります。未来の自分と家族のために、今日からできる準備を少しずつ進めていきましょう。