
加入前に気をつけたいこと
保険は「入れば安心」ではない
孤独死保険は、亡くなったあとに備えるための保険です。けれども、どんな保険にもいえることですが、ただ入るだけでは安心とはいえません。内容をしっかり理解して、自分に合った補償が受けられるかを確認することがとても大切です。
たとえば、原状回復費が補償されると聞いていても、発見が遅れすぎた場合は対象外になることがあります。また、死因によっては支払いの対象とならないケースもあります。加入してから「こんなはずじゃなかった」とならないように、いくつかの注意点をあらかじめ確認しておきましょう。
他の保険との違いを理解しておく
孤独死保険は、一般的な生命保険や火災保険と補償の目的が異なります。生命保険は、遺された家族に対して経済的支援を提供するものですし、火災保険は火災や地震などで損害を受けた住宅や家財に対して保険金が支払われるものです。
一方、孤独死保険は、自分の死後に他人にかかる後処理の費用を軽減するためのものです。ですから、たとえば持ち家に住んでいる人にとっては不要な部分もあるかもしれませんし、すでに火災保険の中に特殊清掃費が含まれている場合は重複することもあります。
保険会社やプランによっては、火災保険や賃貸契約時の保険にオプションとして組み込まれていることもあります。自分の加入状況を一度確認し、必要な範囲だけを備えるようにしましょう。
支払われないケースもある
孤独死保険は「何があっても支払われる」わけではありません。たとえば、加入してから一定期間内の死亡、事故や自殺、事件性のある死亡などは免責事項に該当することがあります。また、遺体の発見までの日数や状況が、保険金支払いの判断に影響する場合もあります。
「自然死」が想定されているプランが多い一方で、病死や突然死、自死については扱いが分かれるケースもあるため、契約内容をよく読み、細かい条件や制限を確認しておくことが必要です。
さらに、賃貸物件の所有者である大家が加入するタイプの保険では、入居者側に保険金が支払われるわけではないため、個人向けか事業者向けかも見極めておく必要があります。
手続きや連絡先の整理も忘れずに
どれだけ良い保険に入っていたとしても、亡くなったあとに誰にも気づかれなければ、保険金は支払われません。また、保険会社に連絡を入れる人がいなければ、手続きは進まないままです。
そのため、最低限しておきたいことがあります。
- 自分がどんな保険に入っているのかを、信頼できる人に伝えておくこと
- 保険証券や連絡先の保管場所を分かりやすくしておくこと
- そしてできれば、緊急連絡先を複数設定できるような見守りサービスや自治体の制度を併用すること
万が一のときに、自分の意思や備えがきちんと活かされるように、事前の準備が大切です。
「もしも」は誰にでも起こりうるから
人はだれしも、死について考えるのは怖いものです。でも、もしものときに備えることは、ただ不安に備えるためだけでなく、自分の人生を肯定することでもあります。自分にとって、何が必要で、何に備えておきたいのか。それを見つめ直すことで、今をより安心して生きていけるのではないでしょうか。
孤独死保険は、最期をどう迎えるかだけでなく、これからの日々をどう安心して暮らすかということにもつながっています。だからこそ、焦らず、しっかり考えて、自分に必要な備えを選ぶことが何よりも大切です。